title
12

百年後も残したい!を目指して

皆さまこんにちは。これまで11回にわたって京繡の文様をご紹介してきました。

 

桜には「五穀豊穣」、松には「長寿」など一つひとつに意味が込められています。

ご紹介した作品の多くを手がけているのが義父である長艸敏明。日々新しいアイデアが溢れてきて仕方がない人、底の知れない知識と技術の持ち主、そして義母いわく「刺繡馬鹿」な人です。

近年取り組んでいる禅の世界をテーマにした作品。仕上がりはかなりパンキッシュ!

父の仕事の姿勢のひとつに、いわゆる一子相伝ではなく、多くの職人や一般の方々にも広く京繡の技術や文化を伝えたい。という思いがあります。広くこの伝統技術を知っていただき、古来からのように自分や身近な人のために刺繡をする人が増えてくれれば、刺繡という祈りが永遠に繋がっていくと考えているようです。

そんな父の世界観を知っていただく機会になればと、このたび作品集を出版させていただくことになりました。果てしない時間と技術の集積の上に出来上がる美しい作品の数々、かなり濃い内容になっております。私も制作に参加させていただいた渾身の一冊です。どこかでお見かけになったら是非のぞいてみてください。


そして最後に、ちょっと真面目なお話を。
京繡作品を展示したとき、多くの方が「素敵ね」と言ってくださいます。とてもとてもありがたいのですが、実はそれだけではこの伝統工芸は百年後、いや数十年後にもほとんど無くなってしまう可能性があるのです。

いいなと思って、実際お手元に置いてくださる方がいるからこそ、新しい仕事や次世代の職人が生まれ、技術も継承していけるという現実があります。

もちろん時代に合わせ淘汰されていくのが自然なので、作り手側も常に時代にフィットした新しい魅力や価値を提供していかなければと思っています。がんばらなければ……!

刺繡に限らず、もし何か「素敵!」「百年後も残ってほしい」と思うものに出会ったとき、「支える」気持ちでお手元においていただければとてもありがたいです。良い循環がうまれ、百年後も千年後も良い仕事、文化が残っていくよう、私も微力ながらコツコツやっていこうと思っております。

最後になりますが、拙い文章にお付き合いくださりありがとうございました!またいつかどこかでお会いできることを楽しみにしております。

PROFILE 長艸 歩(ながくさ あゆむ)

1987年京都市生まれ。芸術大学にて絵画を学び、卒業後は京都の老舗日本茶メーカーで販売や広報として勤務。結婚、出産を機に夫の家業である「長艸繡巧房」にて伝統的な京都の刺繡「京繡(きょうぬい)」を学びはじめる。 現在は3歳と1歳の女の子を育てながら刺繡の技術の習得と、いままで触れる機会のなかったディープな京都文化の吸収に励んでいます。 Instagram(@sica.seka)でも刺繡や文様のことを発信しています。


 イベント告知 
『繡えども繡えども』刊行記念 トークイベント開催!
京繡工芸士・長艸敏明 × ファッションデザイナー・串野真也


「日本のわざ・伝統と革新」をテーマに、 2019年5月11日(土)18時より開催されます。

■銀座 蔦屋書店
東京都中央区銀座6丁目10-1 GINZA SIX 6F
tel. 03-3575-7755

下記からぜひお申込みくださいませ。
銀座 蔦屋書店HP

※ミモレ編集部スタッフによるアテンドはございません。

 

<5月9日 刊行予定!>
『繡えども繡えども』

著者 長艸敏明
A24判 192ページ/ 講談社

長艸敏明氏は歩さんの義父。刺繡作家、京繡伝統工芸士である氏の作品集が出版されます。着物や帯のほか、季節ごとのしつらえや婚礼衣装などの祝い着、祭事の修復や復元まで京繡の第一人者である著者の“刺繡の力”を堪能できる100点を掲載。

構成/山本忍(講談社)