スリリングでミステリアスな展開が人気を呼んだ英国BBCのドラマ『Mistresses』が、としてリメイクされます。描かれるのは偶然の出会いから友人となった、それぞれに“秘密”を抱えた4人の女性の物語。長谷川京子さんは不倫関係にあった恋人の自殺が心に重くのしかかったまま、彼の息子と恋に落ちていく医師、香織を演じています。先日のドラマの記者会見では、ラブシーンの多さでも話題に。40歳になり、仕事、そして育児などのプライベートまで伺いました。

 

長谷川京子 1978年生まれ、千葉県出身。10代の頃から雑誌『CanCam』専属などモデルとして活躍。2000年に女優デビュー。その後、ドラマ、映画、CMなど多数出演する。2008年に結婚、現在は一男一女の母でもある。


ラブシーンやキスシーンも楽しんでもらえたら


「オリジナルのドラマがすごく面白くて、シーズン3まで一気に観てしまいました。行ってはいけない方向に行ってしまう痛々しいところも含めて共感しつつも、日本で一般常識や倫理観を持って生きている自分からすると、つらい目にあったとしても本能のままに生きている登場人物たちがうらやましくなりましたね。
様々な背景や側面に目を向けることなく正しいことを求められている世の中で、その正しさや正義は誰が決めたの? と思うことがあるんです。このドラマは、そういう一方的な正義みたいなものに抗っている作品なのかなと思いました。
香織は受け身な女性で自分から何かを仕掛けるわけではないのに、寂しそうなところが男性を引きつけてしまう。若い男の子から好意を寄せられる役なので、女性の方には香織に自分を投影して楽しんでもらえたらいいかな、と思います。演じながら、なんでこんなに冷たくしているのに寄ってきてくれるんだろう? って思うこともあるくらい、このドラマに出てくる男性はメンタルが強くてタフな人が多いですよ(笑)」

夫が行方不明になって以来、女手ひとつで子育てをしてきたシングルマザーの不器用な恋。妊活について夫婦の考え方の相違と向き合うことになるキャリアウーマンの葛藤。女性に惹かれる自分を発見することで変わっていく、恋多き女の恋愛観。彼女たちの“生きづらさ”に寄り添ったストーリーが描かれていきます。

「直感や本能に目をつぶりすぎると豊かな人間になれないけれど、現実のなかではどうにか社会の枠組みのなかでうまくバランスをとって成長していきたい。そういう思いを持っている人は少なくないと思います。
このドラマを観ながらもしも自分だったら? と想像してもらってもいいし、“実際にみなさんもどうぞ”とは言えないけれど、否定するだけではなくてこういう人生の選択もあるのかな、と捉えてもらえたらうれしいですね。美しいキスシーンやラブシーンも多いので、目でも楽しめるドラマになっていると思います」
 

女として母として、時間の使い方は?


ミモレでも不倫や離婚、セックスレスの記事はアクセス数が多いことを伝えると、「きっとみなさん、正しい情報を求めているんでしょうね」と納得の表情に。

「このドラマが観てくださる方にどのような影響を与えるのかはわかりませんが、日本では性的なことをあまり話しちゃいけないという雰囲気があるなか、そういう話題のきっかけになるかもしれませんよね。母親世代にも私たちにも、性のことは隠れて話すという風潮があったと思います。
私自身は40歳に近づいたくらいから、愛し合っている人たちの究極の愛情表現なんだと思えるようになりました。子供たちにとっても“いけないことをして生まれたんだ”という感覚を持ってしまうと自己否定になるけど、“パパとママが愛し合って生まれたんだよ”と伝えられれば自己肯定感につながる。子供の人間形成においてきちんと正しいことを伝えるのは大切なことだと思うので、『学校では教えてくれないセックス・妊娠・出産の話』などの本を読みながら、勉強をしているところです」

ドラマでも描かれているような年齢や立場を超えた女友だちは、長谷川さんにとっても大切な存在だと語ります。 

「何かを相談したときに、社会性とか倫理観だけを押し付けてくる友人はいないですね。ドラマのなかで元旦那さんが浮気していたことを知って怒る友美に、香織が“でも恋に落ちちゃったからしょうがないのよ”と言うシーンがあるのですが、正論VS本能だからお互いに相入れるのは難しい。
理屈ではわかっているけど、でもね…っていう正解がないことに対しては、話し合いをするしかないと思います。自分のなかにやって良いことと悪いことの線引きはありますが、基本的には頭ごなしに否定せずに受け入れる方。何か気の利いたアドバイスができるわけではないけど、まずは話を聞くタイプですね。
今は窮屈なことも多い時代ですが、正直な感情を抑えずにその人が幸せになる方向に進んでいくことが大事かなと思います」

40代を迎えた今は、考え方も仕事の幅も「どんどん自由になってきている時期」。女優、妻、母として忙しい毎日を送るなか、どのように切り替えをしているのでしょうか。

「上手にコントロールできるときもありますが、こういうドラマに出ているときは気持ちが引っ張られているのか、子供の用事を忘れてた! ということもあります。でもとにかくできる限りのことをするしかないんですよね。毎日やっているのは、朝ごはんを一緒に食べて、お弁当を作ること。子供が満足しているかどうかはわからないですけどね(笑)」

ご自身のインスタグラムにも登場する板谷由夏さんや井川遥さんをはじめ、子育てをしながら働いている友人を、“戦友”と表現した長谷川さん。

「ふたりで会うときは子供を連れて行かず、お母さんとしてというよりもひとりの人同士として会う感覚に近いんです。20代、30代と大変なことを経験してここまで辿り着いていることがわかっているから、お互いへの尊敬がありますね。“私たち、ここまでよく頑張ってきたよね”って(笑)。
同業の友だちには多くを語らなくてもわかりあえるありがたさがあるし、一方では学校のママ友のような、子供がいなかったら足を踏み入れることがなかったコミュニティにも受け入れてもらい、助けてもらっています。自分ができないことをアピールして弱みを見せられるのも、今の年齢だからかもしれない。“ごめんなさい”と“ありがとう”ばかり言っている毎日です(笑)」

家族や友人との関係はもちろん、可能な限りひとりで過ごす時間も大切にしているそう。

「周りの40歳を超えた友人たちは、ときには愚痴を言いながらもすごく楽しそうなんですよね。私自身もそのときどきの楽しみや幸せを見つけていきたいと思っているので、今はひとりで映画を観たり、車を運転したりする時間を作るようにしています。
最近は『グリーン・ブック』を2回観ました。『女王陛下のお気に入り』を観ながら日本でもこういう作品が作れたら面白そうだなぁ、なんてことを考えたり…。“なんでもあり”の時代を楽しめる自分でいたいなと思っています」
 

<作品紹介>

一人では抱えきれないほどシリアスな秘密を持つ、4人の女たちが、暇を見つけて集まっては、食事し酒を飲み、互いに自分の胸の内を明かして、うっ憤を晴らす。だが、それぞれの問題が極限に達した時、彼女たちは協力して自らの人生を懸けた大きな勝負に挑んでいく!

イギリスではシーズン3まで制作され人気シリーズとなったドラマ『Mistresses』。米国版がシーズン4まで、ロシア・スロバキア・韓国でもリメイク版が制作され、待望の日本版。今の日本を生きる女性たちが感じている“生きづらさ”や“焦燥感”と真正面に向き合いながら、「幸せとは?」という大テーマをスリリングに、ミステリアスに、ロマンチックに描く。

4月19日(金)より、NHK総合にて毎週金曜夜10時(連続10話)。


撮影/横山順子
取材・文/細谷美香
構成/片岡千晶(編集部)