こんにちは。ミモレの川端です。
【ベストブック2018】もメイン部門、単行本小説編を残すのみとなりました。ギリギリまで迷っていて……読み直したりして……遅くなってしまいました。お正月休みももう終わりですね(汗)。今年は年内に【ベストブック2019】を発表しようと反省しております。

私が楽しみにしているベストブックは、尊敬する翻訳家・鴻巣友季子さんが紹介すると。2018年の、日本の小説については「クロニクル的な小説、史実や現実のできごとに取材した小説も目についた一年」だったと評してらっしゃいました。確かに、社会問題や実際の事件をベースにしたドキュメンタリーのような作品が印象に残りました。映画やNetflixなどの動画配信でも、ドキュメンタリー作品がとても増えていますよね。

そんな今年の小説編は、2018年に刊行された単行本(海外、国内含む)から選びます。

第5位は、
チョ・ナムジュさんの

韓国で100万部を突破したフェミニズム小説。K-POPアイドルの女性メンバーらがSNSにあげたことで炎上、さらに議論を呼び、社会現象にまでなるベストセラーに。

淡々としているのに不穏な空気が流れている不思議な小説です。主人公のジヨンは82年生まれに最も多い名前だそう。日本でいうと「愛ちゃん」とか「裕子ちゃん」みたいなことでしょうか。この本を読んだ多くの韓国の女性たちが「これは私の話だ」とコメントしたといいますから、このタイトル付けが非常に上手ですね。

ジヨンは35歳の主婦で1歳半の娘と夫の3人暮らし。夫の実家に帰省していた際に、ジヨンの母親や夫の元カノが憑依したように話し始め、周囲はびっくりします。病院に通うことになり、この小説はその「カルテ」という体裁をとって、ジヨンの生い立ちが淡々と語られていきます。

「夫の実家に帰っていた際に発症」というところがポイント!!
ミモレ読者の方の中にも、夫の実家へ帰省すると、いつもと違う自分や男女の役割差を体感されることがあるかもしれません。

ここの描かれる韓国の状況は、日本の昭和かそれ以前の家父長制が強かった時代と似ている気がします。
昨年「ソウルで働く女性たちのインタビュー」をさせてもらう機会がありました。(「キャリアは?出産&子育ては?男女の平等は? 働く韓国女性たちのホンネを直撃!」)みなさん「私自身は今、男女差別を感じることはあまりないけれど……」と前置きをした上で、産後復帰後や女性ボスが活躍しにくい状況について率直に話をしてくださいました。確かにそのあたりは日本と同じ。ソウルという大都市と地方でもかなり男女観は違うでしょうね。

表紙の絵は榎本マリコさん。装丁は名久井直子さん。装丁だけでいうとこの本がNO.1かな。名久井さんの本はジャケ買いをしてしまうことが多いです。

こちらも2018年刊行のお気に入り、山内マリコさんのも名久井直子さんの装丁なんです。素敵です♡

 

続いても装丁も大好きなこちら


第4位は
辻村深月さんの

表題の通り、噛みあわない会話とある過去についての短編集です。言ったほう、やったほうは忘れていたり、記憶がすり替わっていたりするある過去について、やられたほうが復讐するシーンを取り上げています。

詳しい感想は、前のブログ「あの人のこと、よく知ってるよ」に書いたのでこちらでぜひ。

復讐劇と言っても、読んでスッキリするタイプではなく、どちらかというと復讐された側に感情移入してしまい、ずしーんと重たい作品です。

この本のように「啖呵を切る」ことは現実にはなかなかできないけれど、いつか相手に突きつけてやりたい、と思う“ある過去”は誰にでもあるのではないでしょうか。

第3位は、
本谷有希子さんの

海外旅行でインスタアップに夢中になるアラフォー3人組。ネットショッピング依存症の主婦。妻の醜い姿を動画にアップする夫婦。SNSに翻弄されながら、救われている私たちの物語。――を旅先で読み、空港でSNSにアップする私。エアポートおばさん。

こちら読みながら頭を小突かれているような衝撃と不快感(褒めてます)。これは!!と、本谷有希子さんご本人にインタビューもさせてもらい、初のインスタ読書会でも語った思い入れ深い作品です。インスタ読書会には、担当編集者も来てくれて、『静かに、ねぇ、静かに』が「SNS」の頭文字、という謎解きが明かされてすごく嬉しかったです。

本谷さんのお話でとても印象に残ったのは、「警鐘を鳴らすつもりはない」とおっしゃっていたこと。SNS社会を批判している作品でもなく、いいとも悪いとも言ってなくて、ただただ「なんか気持ちが悪い感じ」をそのまま描くことを目指した、それこそが「小説の意味」なのではないかと。

先にあげたも、もしかしたらそうだったのかなと思いました。社会現象にまでなってしまって、「韓国の女性差別に切り込んだ問題作!」などと言われているけれど、文の中に著者の意見は盛り込まれておらず、女性のあるあるエピソードが静かに並べられているのです。

私たちもつい本や映画の紹介の際に「〜〜に警鐘を鳴らす問題作」とか書きがち。安易だがキャッチーだから(汗)

警鐘は鳴らしてないけれど、すごく面白くて、心の中の鐘が鳴る作品でした。未読でしたらぜひ。
 

第2位は、
井上荒野さんの

主人公は69歳のゆり子。定年後の夫・昌平72歳と二人暮らし。息子と娘が家を出て、夫婦二人きりになって16年。夫が急に購入してくれたクロスバイクで二人で出かけ、食べ歩くのを日々の楽しみにしていたのですが、夫が事故で骨折してしまいます。自転車屋で出会った青年・一樹に、ちょっとした買い物や車の運転を頼むことにするゆり子。息子のように頼もしく思えたのですが、ある日、家の中の異変に気づいて……。

 物語は、ゆり子の視点と一樹の視点、交互に描かれるので、読者の私たちは、一樹が「ただのいい子」じゃないことは早々にわかります。
でもものすごい悪人でもない。

ゆり子さんはとても上品でごくごく常識的な女性です。
一樹が入ってきたことでギクシャクし始める夫婦関係。そのあたりの描き方が、井上荒野さんは上手いな〜と思います。

そして異変に気づいてからラストにかけてのゆり子さんの奮闘。結末は言えないけれど、今回紹介した他の作品の中で、読後感が一番良いです。

これもタイトルと装丁が素晴らしいですね。面白くないわけないもの。「その話は今日はやめておきましょう」なんども口に出して言いたくなっちゃう(笑)

続いても、タイトルのインパクト、2018年NO.1。

2018年のベストブック第1位は、
姫野カオルコさんの

東大生5人による強制わいせつ事件をモチーフに、事件をうんだ背景を炙り出すように描きます。所属することで生まれる優越感とコンプレックス、ホモソーシャル、スクールカーストなど誰の心の中にもある悪意を映し出すミラー小説。

ミモレの中でも何度か記事に取り上げ姫野さんのインタビューインスタ読書会も実施したので語り尽くした感はありますが、まだまだ語りたいことの残る作品です。

いました。こんな風にネットでもリアルでも議論される作品も珍しく、今を表している気がしました。

悲しいことに、本が売れないと言われて久しいです。中規模書店の多くは、単行本のコーナーはかなり縮小して、ベストセラー新刊と文庫の棚が拡大し、ビジネス書や実用書が大きなスペースをしめていますね。

単行本で買う意味って何だろうと私も考えます。今すぐ読む必要があるのか、「家に置きたいアイテムかどうか」をすごく吟味するようになりました。今回挙げた本をあらためて見るに、グッズとしての完成度が高いなあと思います。

たくさんの本をどうしているんですか?とよく聞かれるようになりました。うちの本棚はあまり大きくなくて、ここに並べられなくなったら(横向きに積むのもナシです。そこは厳密)、売ったり、処分したり、人にあげたりしています。あ、漫画は別に押入れに入れてます(^^)以前は所蔵欲があったのですが、把握できないほど持たないことで大切に扱えるようになりました。本を並べ直したり、一軍と二軍を入れ替えたりするのが好きです。

今年もみなさまに素敵な本との出会いがたくさんありますように!
そんな一助となれたら嬉しいです。
 

そして、そしてお知らせ!新年最初のインスタ読書会は、1月8日(火)20:00〜ライブ配信予定です。
テーマは、北欧ミステリーにするか、ベストブックについて語るか、まだちょっと迷っています……すごく優柔不断(汗)。これについて話したいとかもしあればぜひ♡

いつもブログがすごく長くなっちゃって。これでもだいぶ削っているんです(汗)1冊1冊、もっとお話ししたいことはたくさんあるのに、うまく伝えられていない気がして。1月8日は、ゲストの方もおらず私ひとりなので、お気に入りの本についてダラダラと(!)存分に喋れたらな〜と思っております。

ではではまた〜!