パリコレクションが始まり、2019年春夏のコレクションシーズンは終盤を迎えています。今回、私が大注目していたのは、何と言ってもエディ・スリマンを迎えたセリーヌでした。評判がとてもよかったフィービー・ファイロへ)からの電撃交代。ディオール オムやサンローランなどでファッション界の寵児となったエディが何をしでかしてくれるのか、もちろん私だけではなく、世界のファッション業界人、ファッションフリーク、エディマニアたちが注目していたショーです。

こちらがファーストルック。このミニ丈。今までのセリーヌとの決別を高らかに宣言しているかのようです。©ロイター/アフロ


で、賛否両論が巻き起こっております。

『エディ色に染まった「セリーヌ」。これは未来か失望か』WWDより 

ブランドとデザイナーの化学変化を求めたコレクションではなく(個人的にはエルメスにおけるマルジェラのようなことがあるのではないかと期待していた部分もあるのですが)、ブランドカラー自体をエディ色に染め上げてしまったということで賛否を呼んでしまったようです。詳しくは評論家の方に譲りますが、概ねの論調は、賞賛か落胆のいずれであっても『エディはエディだ! そんなこと分かっていたじゃないか』ということに帰結しているようです。とはいえ、セリーヌのビジネス面の角度からみれば、すべてが想定内のコレクションだったのではないか。とも言われております。

『セリーヌ2019年春夏パリ・コレクション』WWDより 

エディらしい、“いかにも”な細身のスーツスタイル。現在のようなジェンダー論が巻き起こる前から、エディはジェンダーを超越したスタイルを発信していたよなぁ、と思ったり。©ロイター/アフロ


(セリーヌを傘下におく)LVMHグループの会長兼最高経営責任者のベルナール・アルノー氏は今年2月の決算会見で、「5年以内にセリーヌの売り上げを2倍~3倍にする」と宣言しました。今回のコレクションから、メンズラインを拡充。それだけでも売り上げを倍にすることは射程圏内かと思うのですが、さらなる発展を模索し、男女の垣根を越えてミレニアル世代に絶大なる支持を得ているエディに起爆剤的役割を託したということなのでしょう(何せ、エディにはレディスとメンズに加え、オートクチュールもパルファンも任せているわけなので)。今までのブランドターゲットの核がマチュア世代のマダム層であったことを考えれば、「エディのコレクションはなかなかの劇薬だよなぁ」と思うのですが、ビジネスの転換点にはこれくらいのインパクトが必要なのだ、とたいへん勉強にもなりました。

ちなみに、ルイ・ヴィトンのアーティスティックディレクターをオフホワイトのヴァージル・アブロー、ディオール オムには元ルイ・ヴィトンのキム・ジョーンズ、ベルルッティには元ディオール オムのクリス・ヴァン・アッシュをすえています。若者たちから熱狂的人気を得ているデザイナーをとりこみ、一定の評価を得たデザイナーをLVMH傘下のブランド間で軽妙にスウィッチさせていることからも、今後のビジネス戦略が透けて見えてくるような気がします。

これからセリーヌの各店舗は、サンローランの時と同じように一気にエディ色に染め上げられていくことでしょう。エディの提案するスキニーパンツやミニタンク、タキシードジャケットなどに興味がないとしても、こんな視点で店舗や広告、商品をチェックしてみるのはたいへん面白いのではないのでしょうか?

カール・ラガーフェルド、レディ・ガガ、カトリーヌ・ドヌーヴ……フロントロウは錚々たるメンバーですね。ちなみに、今回のフロントロウに招待されていた、ドット柄のレギンスのようにレイヤードしていた写真を見て、良くも悪くも「さすがだなぁ」と思いました。©AFP/アフロ


と、なんだか真面目なことを書いてしまいましたが、個人的にはエディの提案するロックなスタイルは、彼がどのブランドに携わっていた時でも(実際に着るか着ないかは別として)ツボでした。久しぶりのコレクションを見たら、エディの(ディオール オムの)服を着るために当時50kgの減量をしたカール・ラガーフェルドのように、体をキュキュッと絞りたくなってしまいました。

今日のお品書き
毎週、亜希さんの指針となっているコトバを紹介していただいている連載「ことばのチカラ」の昨日の投稿では、亜希さんが家の中で一番好きな場所が公開されています。わかります、わかります。家にこんな場所があったら私も一日中ごろごろしちゃうだろうなぁ。