「自分らしいスタイルをつくるうえでキーになるのは、洋服よりもむしろ靴やバッグです」と語るのは、ファッション・エディターの山際恵美子さん。マガジンハウスのモード誌「GINZA」元編集長であり、ファッションの最先端を見てきた山際さんのファッションセオリーが詰まったより、短期集中連載の第2回。今回は、靴編です。
 

靴に一番お金をかける


洋服に回す予算を削ってでも、上質な靴を一足手に入れましょう。これは「買ってもいいモノ」というより「ぜひ、買いたいもの」です。なぜなら結果的に余計なモノが増えない、究極の「おしゃれの引き算」につながるからです。
 

ワンシーズンで、靴は3足


私は3足、タイプの違う靴をもつことをおすすめします。


① エレガント(ヒールのパンプスなど)
② カジュアル(ローファー、スニーカーなど)
③ 遊びの靴(その季節のトレンドの色、形などを反映した靴)


ここでワンシーズンとは3ヵ月のことですが、この3足は春なら夏までの6ヵ月間、秋なら冬までの2シーズン、ひょっとしたら3~4シーズンまたぐことも可能です。

実際、私はワンシーズンで3足をまるごと入れ替えることはもちろんありません。1足プラスするだけで、丁寧にメンテナンスをして長く履くことのほうが多いです。

具体的に、私のある春夏シーズンの3足をご紹介します。

① カーキスエードのパンプス(ジャンヴィト・ロッシ) 7cmヒールでも「走れる」パンプス
② 黒のフラットシューズ(ファビオ・ルスコーニ) 木目のヒールに惹かれ即買いしたフラット!
③ トレンドカラー、赤を反映したサンダル(トリッペン) コロンとしたフォルム鮮やかな赤がポイント

①はもうかれこれ4年目、②は2年目。③のみ、このシーズンで買い足した靴です。

セレクトの際に一番大事なのは、言うまでもなく「履き心地」です。とりわけヒールのあるパンプスは、足にぴったりの1足を探すのは至難の業。でも徹底的に履き心地にはこだわってください。少しでも違和感のあるものはあきらめましょう。

私のセミナーでも「外反母趾(がいはんぼし)でヒールが履けません」「パンプスの選び方がわかりません」という質問が必ず出ます。外反母趾用のパンプスもネットで検索すれば見つかります。サイズ交換など無料で対応してくれるサイトもあります。いずれにしろ、パンプスを選ぶポイントは「土踏まずがフィットしているか」「指、とくに小指が当たらないか」です。そして、もちろん、歩いてみます。
 

靴の予算はどのくらい?


靴は品質がもっとも価格に反映されるアイテムです。しかし、いくら素敵なデザインで、価格もそれなりにする靴でも、自分の足に合わなければ何の価値もありません。木型が合っているかどうかが、何よりも優先されます。若いころなら、多少足に合わない靴を長時間履いていても、体力、気力がその不都合を補ってくれます。
でも、その我慢が健康にまで影響を及ぼすのは明らか。外反母趾は「負の遺産」ですね。
そこまでいかなくても、合わない靴は、足の痛みはもちろんのこと、肩こりや腰痛、ひいては頭痛など、いらぬ不調を呼び込む元凶となります。

かといって、履きやすさだけをうたった靴には、残念ながらおしゃれなデザインは望めません。私がミドルエイジ以降の女性の足元を見て、一番残念に思うのが、この種の靴を履いている場合です。
健康と履きやすさ、デザイン性のすべてを満たす大人のための靴は、最低で2万円はすると思ってください。できれば5万円の予算が欲しいところです。
 

2万円と5万円の差はどこにある?


答えのひとつが靴底です。2万円台でも履きやすく、おしゃれな靴は靴底がラバーである可能性が高いのです。なぜなら本革ではないぶん価格は抑えられますから。
ラバーのほうがクッション性は高いので、かえって歩きやすいという利点があります。でも、そのラバーが減るころ、靴本体も型くずれを起こし、修理してまで履こうというのはまれです。

実際、私は靴を買うとすぐにメンテナンスのために、お直しのチェーン店などで革の靴底に「底張り」をしてもらいます。底張りをした靴は、5年から10年、モノによってはそれ以上履けますから、初期投資は5万円でも、活躍する期間は倍以上です。
どちらをよしとするかは、それぞれの予算や考え方によると思いますが、いずれにしろ中途半端なものをいくつも買って、なんとなく履いているくらいなら、思い切って一度、靴に投資してみることを強くおすすめします。
なぜならその靴は、間違いなくあなたに寄り添い、長年のパートナーとしておしゃれをバックアップしてくれることになるからです。

こうして本当にいい靴を1足持つと、きっと変化がおこります。
以前、雑誌「クロワッサン」の編集部にいたころ、取材で著名な女性陶芸家の方に、陶器の選び方についてインタビューしたことがありました。
「いい器を見分けるコツはありますか?」という質問に、
「繕(つくろ)うてでも、使いたい器を選ぶことです」
と、こともなげにお答えになりました。ご存じのように、器の世界では「金継(きんつ)ぎ」といって、割れたり欠けたりした器を漆(うるし)で接着し、継いだ部分を「金」で装飾しながら修復する伝統的な手法があります。
そこまでして使いたい器を買いなさい、というのです。さらに、こうも続けました。
「そうすると、 いやで変な器は、いつのまにか食器棚から消えていきますよ」
靴もしかりです。いえ、靴だけではない、ファッション断捨離の極意かもしれません。

ファッション・エディター&編集プロデューサー 山際恵美子

東北大学卒業後、ロータリー財団奨学生としてフランス留学。帰国後「エル・ジャポン」創刊メンバーとして編集の道に入る。ファッション雑誌「GINZA」元編集長。フランス語と英語を生かし、ミラノ&パリコレクションを10年以上最前線で取材。マーク・ジェイコブスやシャネルのデザイナー、カール・ラガーフェルドの単独インタビューなど独自のアプローチで注目を集める。雑誌「エル・ジャポン」「クロワッサン」「GINZA」を経て、書籍編集に移り、「断捨離」担当編集はじめ、ファッション、美容、医療、料理、ライフスタイルなど幅広い書籍を出版。2016年マガジンハウスを退社後、ファッションアドバイス、執筆・編集、講演などで活躍中。オフィシャルブログ: :

 

<新刊紹介>

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・「「GINZA」元編集長が教える・大人のおしゃれは「3パターン」あればいい【山際恵美子さん短期集中連載①】」はこちら>>
・「大人が持つべきバッグは3タイプ【山際恵美子さん短期集中連載③】」はこちら>>

撮影/最上由美子 文/山際恵美子 編集・協力/藤沢陽子(大和書房) 構成/川端里恵(編集部)